おはようございます!
皆さま、私、本日のセッションホスト
をつとめます、青井と申します。なに
とぞよろしくお願いいたします。
私、前職は某メーカーの営業でござい
ました。そこで学んだことは、何につ
けてもマナーを守る、これでございま
す。先輩を立てる、目上の方に失礼な
ことをしない。そうやって可愛がって
いただいてこそのビジネスでございま
した。
これは人間として常に守るべきことで
ございます。ところが、セッションを
始めて愕然としましたのは、この大切
なことが、どれほどセッションでは無
視されているか、ということでござい
ました。こんなことではいけません。
そこで私、一念発起いたしまして、セ
ッションホストになりました。セッシ
ョンのマナーの向上をめざして、ホス
トとしてやっていく決意をしたわけで
ございます。
前置きが長くなりました。それでは、
本日のセッションを始めたいと思いま
す。本日の1曲目は、えー、はい「C
ジャム・ブルーズ」ですね。デューク
・エリントンの作った、ごくシンプル
なブルーズの曲です。いいですね。
えー、先ほども申しましたが、私のセ
ッションでは、「マナー」というもの
をとてもとても重視しております。参
加される皆さまには、その点を十分に
ご理解いただいた上で演奏をしていた
だきたいと思います。
いくつかの注意点を申し上げますと、
まず演奏の前にはしっかりとお互いに
礼をしてください。とくに若い方は目
上の先輩への敬意を欠かさないように
お願いいたします。
テーマについてですが、よく本来のテ
ーマのメロディがわからなくなるほど
崩したテーマの演奏をされる方がいら
っしゃいますが、これは素晴らしいテ
ーマを書いた先人への礼を欠く行為で
すので、節度ある演奏をお願いいたし
ます。
また、テーマが終わってソロに入りま
すが、最初にソロを取るのは一番の先
輩からお願いいたします。この中で一
番お年上の方は……あ、サックスの、
はい、ソロの一番目、よろしくお願い
いたします(深く一礼)。
ソロを取るというのは、全体の最前列
に立つということですので、その前に
は必ず一礼して始めてください。それ
から次の人にソロを受け渡す時も、お
互いに一礼しあって交代してください
ね。
それから、あの、最近とくに目に付く
のですが、ソロを替わる時に、前の方
のソロが終わり切らないうちに、それ
にかぶせて演奏を始める人がいますが、
まったく前の方への敬意を欠いた行為
ですので、おやめください。まあ、前
の人が気心の知れた後輩とかでしたら
いいかもしれませんが、お勧めはいた
しません。
あと、他の人がソロを演奏している最
中にオブリガートとかいって、かぶせ
て演奏したりする人がいますが、そう
いうことをしたい時は、事前にちゃん
と了解を取った上でなさるようにお願
いいたします。前触れなくそのような
ことをなさるのは重大なマナー違反と
私考えております。
また、目上の人のソロに、若い方がそ
のようなオブリガートなどを差し挟む
のも、大変無礼な行為ですのでおやめ
くださ……、あれ?
参加者のみなさん、どこに行かれまし
た? ……は? 面白くないので帰っ
た?
な、なんという嘆かわしいことでござ
いましょう。
し、しかし私は負けません。世の中の
セッションが、みんな正しいマナーで
行われる日が来るまで、私は粉骨砕身
戦って参ります。いかなる困難にも私
は……(以下略)
※このお話はフィクションです。現実
のセッションやセッションホストとの
関連はありません。たぶん。
て、ことで。
それでは、また。( ̄▽ ̄)