その日、俺はとても忙しい一
日を送っていた。まあ、人間仕
事をしてるとそんな日もあるも
のだが。
担当している2つの別のクライアント
の案件でトラブルが発生していた。
1つは社内の内勤部署でコロナのクラ
スターが発生し、納期が間に合わなさ
そうだという問題。
そして、もう1つは、クライアント側
の意思決定が二転三転し、業を煮やし
た別の内勤部署がへそを曲げて、これ
また納期に間に合わないという問題だ
った。
本来なら、俺ともう1人の同僚で手分
けするはずなのだが、間の悪いことに
同僚はその日まで休暇中なのだった。
ダメもとで、おれは同僚にもメッセー
ジを入れてみたが、同僚は、国内旅行
中だった。
まあ、午後の新幹線で戻るから、気が
向いたら会社に寄ってやるよ。同僚か
らはそんなメッセージが返ってきた。
まるで人が苦労しているのを半分楽し
んでいるように読めた。いや、あいつ
のことだから絶対そうに違いない。俺
はそう確信した。
俺は、メールをし、電話をし、在宅勤
務をとりやめて出社し、内勤のフロア
に出向き、なんとか納期に間に合わせ
ることができないか、解決策を探った。
その一方で、クライアントからは、納
期がどうなるのか、問い合せが頻繁に
やって来る。それ以外のクライアント
からもメールが来て、俺の頭は破裂し
そうになっていた。
なんとか、内勤との調整を付ける方向
でやり取りが進みつつあったが、予断
は許さなかった。
メールは相変らずひっきりなしにやっ
てくる。
あーーーーーっ!
プレッシャーに負けそうになった俺は
思わず大きな声を出してしまった。
どうした、どうした。声を聞き付けた
部長が俺のところにやってきた。
俺は、状況を説明した。
そうか、そういうときはちょっと目を
つぶれ。部長は言った。
目を? 俺は聞き返した。
そうだ、1分でもいいから目を閉じて
外部からの情報をシャットアウトして
みろ。それだけでも脳の休息になって
リフレッシュするから。
ホントですか? 俺は半信半疑だった。
ん……そう、この間読んだ本に書いて
あった。まあ、騙されたと思ってやっ
てみろ。部長はそう言って自分の席に
戻っていった。
そう言われた俺は目を閉じてみた。
確かに、PC のスクリーンを凝視して、
そこに山のようにやってくるメールを
見て感じるプレッシャーがなくなり、
脳がリラックスするのを俺は感じた。
これはいいかもしれない……
……
おいおい、どうしてこんな時に呑気に
居眠りできるかね。同僚の声がした。
俺が目を開けると、目の前に同僚がい
た。
な、なんだ、どうした? 俺は言った。
ご挨拶だな。お前が大変だっていうか
ら休暇帰りに会社に立寄ってやったの
に。同僚は言った。時計を見ると、ど
うも1時間ほど俺は寝ていたらしい。
そうだった。問題の解決をしないと…
…。俺は急いで PC の画面を見ようと
した。
あ、納期の問題2つともどうにかなり
そうっていうメールが入っていたんで
俺からクライアントにはメールしてお
いたぞ。じゃあな、同僚はそう言って、
立ち上ると部屋を出ていった。
え? 俺はぽかんとして同僚を見送っ
ていた。
そこに部長からメッセージが入ってい
るのに気がついた。
言うの忘れたけど、目をつぶるときは
念のため居眠り防止にタイマーかけて
おいた方がいいぞ。そんなメッセージ
だった。
えええー?
※このお話はフィクションなので、現
実のクライアント、内勤部署、同僚、
部長、仕事ハックとは無関係だと思い
ます。たぶん。
て、ことで。
それでは、また( ̄▽ ̄)
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