コール・ポーターという人の書
いたスタンダード・ナンバーで
“I Love You” というのがありま
す。▼▼▼
すごくどストレートなタイトルですよ
ね。歌詞の方も「春がまたやって来て
/鳥たちも再び翼を広げ」とかそんな
わりと陳腐な感じのフレーズが入って
たりするんですが。※
これ、実はコール・ポーターが友人か
らこういうタイトルでこんな歌詞を使
って素晴らしい曲を作ってみろ、とい
う挑戦を受けて、それで書いた曲なん
だそうです。つまりポーターらしいヒ
ネリのないタイトルや歌詞で良い曲を
かけるか? というわけでして。
結局この曲はミュージカルの中で使わ
れて、その後ビング・クロスビーが歌
ってヒットし、スタンダードナンバー
になるわけなんですね。つまりポータ
ーの勝ちだったわけです。
「素晴らしいメロディーは凡庸な歌詞
を凌駕する」とかポーターはいってた
らしいですが。
でね、
ポーターの言うようにこの曲はメロデ
ィーに特徴がありまして。曲の冒頭、
そのまさに I Love You という歌詞に
あわせて、上の C から下の Db に跳ぶ
というところがあるんです(ちなみに
よく演奏されるキーFでの場合です)。
つまり、長7度下に跳び降りているん
ですね。この冒頭部分につけられたコ
ード(サブドミナント・マイナー系)
とともに意表をつく出だしとなってま
して、この冒頭部分によってこの曲の
印象はほぼ決まっているといっても過
言ではないかも(まあ中間部の転調と
か他にもなくはないですが)。
曲を作る時、流れるような綺麗に音の
つながったメロディーを生み出したい
と思うことも多いですが、印象に残る
メロディラインが生まれるのは、音の
跳躍が挟まれたときだったりします。
つまりスケール上のとなり(たとえば
メジャースケールだったらド→レとか
ソ→ラとかですね)やすぐ近くの音に
動いていくのではなく、ちょっと遠い
音へと跳ぶ動きが生まれた時ですね。
もちろん年がら年中跳びまわっていて
も落ち着かないので、バランスではあ
るのですけども。
人間も、人生でときには日常に流され
ずに「跳ぶ」ことが求められることが
あるのと一緒かな? なんて思ったり
して……あまり関係ないか。ま、でも
そんなことをちょっと考えた、と。
※原文は:It’s spring again / And
birds on the wing again
て、ことで。
では、また ( ̄▽ ̄)