まったく、どうしてそう何度
も同じミスを繰り返せるんだ?
同僚は俺に言った。
クライアントとの打合せを終えて、俺
たちはクライアントのオフィスを出た
ところだった。
同じこと、というのは俺が打合せの途
中でまたちょっと居眠りをしてしまっ
たことを指していた。
すまん。
俺は謝るしかなかった。
昼飯をちょっと食いすぎたみたいだ。
炭水化物が多かった。
俺は昼飯の定食のごはんをおかわりし
たことを悔やんで言った。
だから、そんなこと食べる前から分か
っていただろう。この前とまったく同
じじゃないか。そういうミスばっかり
するやつは、メタ認知能力が低いんだ。
少しは改善する努力をしろ。
同僚は言った。俺と同僚は打合せの振
り返りと対応策の相談のために、街な
かのカフェに入ったところだった。
メタ認知能力? なんだそれ。
俺は言った。
自分のことを客観的に見る力だよ。そ
れができてれば、今ここで食いすぎた
らその後の打合せでどうなるか、食う
前にわかるだろう。日記でもつけて毎
日の失敗の記録でもつけるんだな。そ
うすりゃもうちょっとミスが減るだろ
うよ。
同僚はかさにかかって俺を責める。俺
は黙っているしかなかった。と、そこ
でそばのテーブルにいた男が俺たちを
見た。
おう、なんだお前どうしてここにいる
んだ?
その男は同僚に話しかけた。同僚はそ
の男を見て驚いて立ち上がりそうにな
った。
な、何って仕事で得意先に来てたんだ
よ。お前こそ何してるんだここで。
なんだそうか、偶然だな。おれもこっ
ちに仕事で来たんだ。それより、お前
今度のライブの練習してるか? お前
いつも同じところで間違えるからな。
その男は同僚にまくしたてた。どうも
同僚がいつもギターデュオをやってい
るとかいう、その相方らしい。
わかってるよ! もう今仕事してるん
だから邪魔しないでくれ。
あはは。いい加減同じミスしないでく
れよ。あ、すみません、お邪魔しまし
たね。こいつ、何度やっても同じとこ
ろ間違えるんですよ。仕事でご迷惑か
けてないですか?
男は俺に向かって言った。
あ、はあ……。
なんと答えたものか、俺にはわからな
かったが、同僚の困った顔がおかしか
った。
じゃあな、週末までにちゃんとやって
こいよ。
男は同僚の背中をパンと叩いて、店か
ら出て行った。
沈黙が流れた。同僚は憮然として上を
向いている。
俺は笑うわけにもいかず、好きな女の
子の前の高校生みたいに下を向いてい
た。
※このお話はフィクションですので現
実のギターデュオ、クライアントとの
打合せなどとは何の関係もありません。
たぶん。
て、ことで。
それでは、また。( ̄▽ ̄)
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