身体が勝手に動く?

(今回のお話はフィクションです)
る土曜日のことだ。俺と例の
同僚は、とある斎場に来ていた。

 

引退していたクライアントの元部長
亡くなったのだ。

 

葬儀は身内だけの密葬として行われた
のだが、現役の頃には幅広い人付き合
いをしていた人だったので、「お別れ
の会」というのをやることになったの
だ。

 

同僚は、この部長が地方の事業所
に行っていた時にお世話になっていた
のだが、もともと東京の人で当時は
身赴任していたそうで、「お別れの会」
は都内で行われていた。

 

混雑を避けるため、会の参列者複数
のグループに分けられ、指定された時
間に集合するようにいわれていた。こ
ういう会を実施する側も大変だ。

 

俺と同僚は、他の参列者と共に、会場
の1階の控え室で、用意された故人の
写真などを見ながら、献花をする時間
が来るのを待っていた。葬儀ではない
ので、焼香ではなく献花なのだった。

 

音楽が好きな、陽気な人だったな。俺
は言った。写真の中に、故人にわれわ
れも加わって、ライブハウスに行った
ときのものがあったのだ。

 

そうだな、まあジャズはあまり詳しく
はなかったがな。同僚は言った。おま
えのマニアックなジャズの話乗って
きてくれる人なんてそうはいないと思
ったが、口に出さずに聞いていた。

 

皆さま、それでは会場の用意ができま
したので、2階の会場にお上がりくだ
さい。案内の人間が参列者に声をかけ
た。なお、本日の献花会場では、故人
の好きだった音楽を流させていただい
ておりますので、ご承知おきください。

 

葬儀ではないので、BGM なども色々
由がきくようだ。

 

われわれは、会場に向かった。階段を
上がると、皆1列に並ばされる。俺は
同僚の後ろに並んだ。

 

そのまま、献花の列を徐々に前に進ん
でいくわけだが、そこで、案内のあっ
故人が好きだった音楽が耳に入って
きた。

 

バリー・ホワイト(とラヴ・アンリミ
テッド・オーケストラ)の「愛のテー
マ」というやつだ。

 

流麗なストリングスと、ファンキーな
カッティングのギターそしてワウワウ
のかかったギターの音が癖になる1970
年代のヒット曲だ。

 

それが終わると、時代は遡って、今度
は「モンキーズのテーマ」になった。
確かにポップ、ソウル系の洋楽の曲が
好きな人だったなあ。俺は思い出にひ
たっていた。

 

あれ?

 

俺は思った。なんだか同僚の様子が変
。なにかをこらえるように身体をこ
わばらせている。

 

その後、音楽スティービー・ワンダ
ーの「フォー・ワンス・イン・マイ・
ライフ」というこれも 1960 年代の曲
になった。スティービーがまだ10代だ
ったころの曲だ。

 

で、また同僚を見るとやはり何か変
……そこで俺は気がついた

 

奴は、音楽に合わせて身体が動くのを
必死にこらえているのだ。

間奏のスティービーのハーモニカソロ
では、本当に懸命にこらえているよう
だった。はそれを見て吹き出しそう
なるのをこれまた懸命にこらえていた。

 

なんとか献花をすませ、俺たちは1階
に降りた。俺は、会場の外に出て、同
僚の顔を見ると、こらえきれずに吹き
出してしまった。

 

なんだ、なに人の顔見て笑ってるんだ
失礼な奴だな。同僚は言った。

 

い、いや、すまん。ちょっとな。俺は
おまえ案外いい奴だな、と言いそうに
なるのを必死でこらえていた。

 

※今回のお話もフィクションですが、
一部私青井の実体験をもとに脚色を加
えております。実在のクライアント、
斎場、献花式とは無関係です。はい。

 

て、ことで。

 

それでは、また。( ̄▽ ̄)

 

 

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