(フィクションですってば)
熟睡とはほど遠かったが、ア
キラが次に気がつくと朝だった。
自分がエフェクターになってか
ら丸1日が過ぎたわけだった。
キラが次に気がつくと朝だった。
自分がエフェクターになってか
ら丸1日が過ぎたわけだった。
「兄さん、起きた?」前日に起きたこ
とをアキラが反芻していると、妹が入
ってきた。「いい知らせよ。専門家を
呼んだの」
「専門家?」
「そう、エフェクターのことはエフェ
クターの専門家に聞くのが一番でしょ」
「エフェクターの専門家って誰?」
「もうすぐ来るわ。見つけるのに苦労
したけど、持つべきはミュージシャン
仲間よね」妹はアキラとは別のバンド
でキーボードを担当しているのだ。た
しか彼氏がギタリストかベーシストだ
ったはずだ。
「そうだ、兄さんの写真をインスタに
上げるって約束したんだった」妹は自
分と巨大エフェクターと化した兄の姿
をスマートフォンで撮影しはじめた。
「おい、よせよ」アキラは言ったが、
そもそも止めようとしても、逃げよう
としても動けないのだった。
「いいじゃない。専門家紹介してもら
う代わりに、インスタに写真上げるっ
て約束したのよ」
そんなことを話しているうちに階下で
ドアフォンの呼び出し音がした。母親
が対応する声がきこえ、ほどなく来客
と一緒にアキラの部屋にやってきた。
「兄さん。いらしたわ。アカシさんよ」
「どうも」とその男は部屋に入ってき
た。物静かな様子だが、手には金属製
のスーツケースを持っていた。背後で
父親と母親がこわごわといったおもも
ちで部屋の中の様子を窺っているのが
感じられた。
「それじゃ、アカシさん、後はよろし
くお願いしますね」妹はそういうと、
父親と母親と一緒に階下に降りていっ
た。
部屋にはアカシという男とアキラの2
人、正確には1人と1台が残された。
「なるほど、これは極めて興味深い」
アカシは独り言のように言った。
「あのー、俺ってどうなってしまうん
ですかね?」アキラはおそるおそる尋
ねた。
「どうなってしまうかですか。それは
私にもわかりませんなあ。そもそも私
自身どうなってしまうかさえ、私には
わかりません。まして、一夜にしてエ
フェクター、しかもコーラスになった
人がこの先どうなるか、と言われても
ですね」アカシは言った。
「……でも、まあ、まずはちょっと見
てみましょうかね」そういってアカシ
はスーツケースを開けた。中にはぎっ
しりと工具が詰まっていた。
「まずは、じっくり調べてみないとで
すなあ。エフェクター好きとしてはこ
の機会を逃すわけにはいきませんから
なあ」アカシはアキラが見たこともな
い工具を手に取った。そして、アキラ
を様々な角度から眺め始めた。
階下のアキラの家族の声が聞こえてき
た。ずいぶんと遠く感じたが、めった
に笑わない父親が笑っているのが聞き
とれた。
アキラの背に(もはやどこが背かわか
らなかったが)悪寒が走った。冷や汗
が流れた。いや、身体の構造上、冷や
汗をかこうにもかけないが、身体の表
面の金属の温度が下がったので、結露
したのだった…
<(゚ロ゚;)>ノォオオオオオ!!
では、また。( ̄▽ ̄)
お読みいただきありがとうございま
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