昔々、ある夏の日に浦島太郎
が海辺で遠くを見つめてビーチ
ボーイズの「サーファー・ガー
ル」かなんかを聞いて気取って
いると、子供たちが、わいわい
と騒いでいる声が聞こえてきま
した。
が海辺で遠くを見つめてビーチ
ボーイズの「サーファー・ガー
ル」かなんかを聞いて気取って
いると、子供たちが、わいわい
と騒いでいる声が聞こえてきま
した。
せっかく西海岸な気分でいたのにとか
思いながら、浦島太郎が近づいていく
と、子供たちは、海岸に打ち上げられ
たギブソン・エクスプローラーをいじ
めているところでした。
「なんだ、この変なかっこのギター。
立てかけておけないじゃん」
「そうとう歪んだ性格してそうだな」
「まともな人間の弾くもんじゃないん
だろ」
……とさんざんないわれようです。
「火つけて燃やしてしまおうか」
それを聞いてエクスプローラーが不憫
になった浦島太郎は、子供たちの中に
割って入り……
「こらこら、そんなひどいことをする
んじゃない。浦島太郎オリジナルのギ
ターピックをあげるから逃がしてやっ
ておくれ」といって、子供たちの手か
らエクスプローラーを逃がしてやりま
した。
「お前もこんな変形モデルにされて大
変だとは思うが、気をつけるんだよ」
「浦島さん、ありがとうございます。
お礼に竜宮城にお連れしましょう」
「竜宮城?」
「毎晩、毎晩、連夜のジャムセッショ
ン三昧のできるそれは楽しい所です。
きれいなおねいさんもいますよ」
そういわれて、そういう所が嫌いじゃ
ない浦島太郎は
「ふ、ふうん、ま、ちょうど退屈して
たから付き合ってやってもいいかな」
……などとカッコつけましたが、内心
わくわくして、エクスプローラーの背
中に乗って出発しました。
エクスプローラーは、浦島太郎を乗せ
て海の中に入り、そのまま海底に向か
いましたが、やがて海中にある雑居ビ
ルに連れて行きました。階段を3階ま
で昇って着いた先の店のドアには「セ
ッションバー竜宮城」と書かれていま
した。店に入ると、そこでは、ファン
クのジャムセッションの真っ最中。
ステージでは、エビやらヤドカリやら
のバンドが演奏しておりフロアでは鯛
やヒラメが舞い踊っていました。
そして、カウンターの向こうでは1人
の女性がドリンクを作っていました。
「どーも、こんばんは。乙姫といいま
すー。うちのエクスプローラーがお世
話になったそうで、今日は、この子を
好きなだけ弾き倒していってください
ね」いつのまにか、浦島の手にはエク
スプローラーがにぎられていました。
乙姫に促されるままにステージに上が
った浦島は、エクスプローラーでファ
ンク?とは思いましたが、もともと嫌
いじゃない性格なので、ハウスバンド
のファンクのリズムに身を任せてギタ
ーを弾き始めました。
あるときはナイル・ロジャーズ風
あるときはアル・マッケイ風
はたまたレイ・パーカーJr.風
ときにはブルーイ風
……といったカッティングを繰り出し
たり
かと思えば、
デヴィッド・T・ウォーカーのような
エロいソロを弾いたかと思うと、
次には、コーネル・デュプリーのよう
なブルージーなフレーズを繰り出し、
また次の瞬間には、
カーティス・メイフィールド風にワウ
を効かせたギターを弾きながらファル
セットで歌ったり、
やりたい放題の演奏を繰り広げたので
した。浦島太郎は次第にトランス状態
になって行きました。
「きもちい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
……
気がつくと、浦島太郎は海辺に倒れて
いました。すでに朝になっており、太
陽が次第に海辺全体を照らし、海辺の
砂が熱くなりだしていました。
「あー、頭いて……。そうか、一晩中
セッションしてたんだっけ……」
浦島太郎が起き上がって、ふと気がつ
くとそばに何か箱のようなものがあり
その中に手紙があるのでした。封筒に
は「乙姫」とあり、中をみると、便せ
んに「お疲れさまでした。ノリノリで
したねー。300日連続であんなにギタ
ーを弾いた人は初めてです。あとでお
会計お願いしますね」と書いてありま
した。
は「乙姫」とあり、中をみると、便せ
んに「お疲れさまでした。ノリノリで
したねー。300日連続であんなにギタ
ーを弾いた人は初めてです。あとでお
会計お願いしますね」と書いてありま
した。
一晩と思えましたが、浦島太郎は300
晩連続でセッションしていたのでした。
封筒の中には請求伝票が同封されてい
ました。
「う……」
その伝票を見た浦島太郎の髪は一瞬で
真っ白くなってしまったということで
す。
おしまい。
では、また。( ̄▽ ̄)
お読みいただきありがとうございま
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