スインギー・パンデミック(続き)

こちらの続きです)
ュージシャンに影響すると
いう新た感染症についてのテ
レビでの解説を俺は聞いていた。

 

均等なリズムが刻めなくなるんです
か?」

 

司会の男が聞き返した。

 

「つまり、例えばこうやって机を均等
なリズムで叩くなんてことは、普通簡
単にできますよね

 

そういってコメンテーターの男は机を
手で叩いた。メトロノームのように均
等に。

 

「ところがこの病気に感染すると、こ
んなふうに均等じゃなくて跳ねたリズ
ムでしか叩けなくなったり、演奏でき
なくなってしまうんです」

 

机をたたくリズムが変わった。三連符
の真中の音を飛ばしたような、いわゆ
シャッフル系のリズムが聞こえてき
た。

 

なんだそりゃ。そんなへんてこな感染
症があるのか? 俺はテレビの画面を
見ながら思った。

 

「さらにこの感染症が実は人工的につ
くられた生物兵器だと主張する人たち
が出てきたんです」

 

「生物兵器?」

 

「はい、声明を出したのは、全日本ロ
ックミュージシャン同盟という団体な
のですが、この感染症はロックという
音楽をこの世から殲滅したいという、
スイング至上主義のジャズミュージシ
ャンたちの仕業であるというんですね」

 

スイング至上主義ですか?」

 

「はい、イーブンなビートで音楽を演
奏できなくさせるための生物兵器であ
るということだそうでして」

 

ばかばかしい。俺はあきれてテレビを
消した。荒唐無稽過ぎる。ロックやイ
ーブンなノリのジャズを敵視するコン
サバなジャズミュージシャンがいて、
最近政治的な動きをしているという噂
は聞いているが。まさか、そんな。

 

俺はギターを持ちなおして練習に戻っ
た。曲はレッド・ツェッペリン「天
国ヘの階段」だ。今度のライブでやる
ことになっている。俺はあの有名なギ
ターのイントロのリフを弾き始めた。

 

その瞬間、背筋に悪寒が走った。

 

なぜかギターのフレーズが跳ねてしま
っている。「天国への階段」のリフが
ハネたリズムでしか弾けなかったら、
コミックバンドみたいでライブどころ
じゃない!

 

俺は何度も弾き直した。だがいくら均
等に弾こうと思っても、フレーズはど
んどん跳ねてスイングしていくのだっ
た……

 

全身から冷たい汗が流れ出した……

 

このお話はフィクションで、現実の
感染症、ミュージシャン、テレビ、天
国への階段とは無関係です。おそらく。

 

て、ことで。


それでは、また。( ̄▽ ̄)

 

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