んー、まあ君のいうこともよ
くわかるんだけどさ。部長は言
った。
またかよ。俺は会社人生で100回目く
らいにそう思った。
あいつの発言が、ふつうじゃないこと
が多いのは確かにそうだ。部長は続け
た。
ふつうじゃないことが多いんじゃなく
て、いつもふつうじゃないんですよ。
無駄なんだろうと思いながら俺は言っ
た。
クライアントの前で、内勤の現場と確
認したのとは全然ちがうことを約束し
ちゃうんですよ。で、その後で内勤と
揉めたりしたら謝ったり説得したりす
るのって、全部私なんですから。俺は
続けた。デジャヴだ。
まあ、君の苦労はわかるよ。だがなあ
俺は君とあいつの関係が、ダイアトニ
ック・コードとノンダイアトニック・
コードの関係のようだとおもっている
んだ。部長は言う。
は?俺は聞き返した。とはいえ、また
この人の好きな音楽理論と仕事を結び
つける話にの世界にひきずりこもうと
してなっているのは、聞き返さなくて
もわかっていたのだが。
だからさ、ダイアトニック・コードっ
ていうのは、曲のキーの音だけを使っ
たコードじゃないか?君もセッション
とかやってるから知ってるだろ?で、
それ以外のコードがノンダイアトニッ
ク・コードだよね?
ダイアトニック・コードは、曲のベー
スとして安定感と安心感をもたらすけ
ど、それだけだとマンネリ感も出やす
いわけだよ。でも、そこにうまくノン
ダイアトニック・コードをまぶすと曲
が生き生きするじゃない?部長は続け
た。
この人はこんな話をいつもしていて、
よく出世できたもんだ。俺は思って聞
いていた。
たとえば、「A列車でいこう」って曲
があるじゃない? あの冒頭3小節目
に出てくる D7 というノンダイアトニ
ック・コードが……
音楽の話はいいんで、つまり何なんで
すか? さすがに俺もたまらなくなっ
て言ってしまった。
ん、ああ、だからさ、俺はこのプロジ
ェクトには君というダイアトニック・
コードとあいつというノンダイアトニ
ック・コードが必要だと思うわけだよ。
どっちかだけだと安易に流れるか、ハ
チャメチャになるかだけど、2人いる
と適度に盛り上がって面白い展開が生
れるというね……
俺は部長が自分の話に酔っているのを
邪魔しない程度にため息をついた。俺
は別に面白い展開とかどうでもいいか
ら、マンネリでも安心感のある仕事が
たまにはしたいんですけど、というこ
とをこの人に分かりやすく伝えるには
どうしたらいいか、必死に考えていた。
※この曲じゃなかった話はフィクショ
ンですので、現実の部長や部下やダイ
アトニックやノンダイアトニックのコ
ードとは無関係です。あれ?
て、ことで。
それでは、また。( ̄▽ ̄)
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