“Les” Is More?

「皆さんは、物を『所有す
る』という
ことに執着するほう
ですか?」

 

私はそんな質問を投げかけた。

 

最近の若者は物を持たなくなってい
とかいう話をよく聞きます。いわゆ
ミニマリスティックな生活が人気で
すよね。『断捨離』がブームなったの
もここ10年くらいの話です」私は続け
た。会場の中の参加者は私の講義の内
容を熱心に聞いてくれているようだ。

 

「英語の “Less is more.” なんてフ
レーズもよく引用されるようになりま
した」今日の参加者は50代以上が多い
ので横文字はどうかな、と思いつつ私
は話したが、とくに嫌な顔をする人は
いなかった。

 

IT技術の進化がそれを助けている側
面もあります。いまや音楽はCDやレ
コードやその他のメディアよりもダウ
ンロードやストリーミングを通じて聴
かれることの方が多くなりました。
らないものはすぐにメル〇リとかで
ってしまえますし」

 

私は、たまたまライターとして、そん
物への所有欲から解放されたライフ
スタイル紹介しただけだったのだ。
ところが、それが人の目に止まり、講
演やらセミナーに呼ばれるようになり、
いまやそんな物欲から解放されたライ
フスタイルのエヴァンジェリストとし
て世の中に認知されるようになってし
まった。

 

もともとは音楽系中心のライターだっ
たのだが、人生どう転ぶかわからない
ものだ。まあそれでローンの返済に苦
労しなくて済んでいるので、文句をい
う筋合いではないのだが。

 

若者は車を買わないって言われて久
しいですね。特に都会では。だって
スマホやタブレットで読むことが増え
ているし。物理的に身の回りにおいて
おかねばならない最低限の物量が減っ
ているということは間違いないでしょ
う」

 

は違いました。私はもうすぐ還暦
なんですが、われわれの若いころは、
『所有』したい『物』があふれていま
したよね。みんなが所有したがる物を
表現するのに『三種の神器』なんて言
葉もありました。そういう物欲・所有
欲の刺激によって経済的に栄えていっ
たという側面もありましたしね、当時
は」

 

「そんなわれわれさらに上のシニア
世代には、先ほどからご紹介している
ような、物の所有から解放された生活
無縁なのでしょうか? そんなこと
はありません、今や『終活』の一環と
て、物を処分して身軽になろうとい
人は多いのです」

 

「断捨離といっても、捨てることにあ
まりにもとらわれ固執するのは問題で
す。ですが、今日お越しの皆さんも、
自分の周りにあるものが、本当に必要
いまいちどよく考え直してみてはい
かがでしょう?」

 

……

 

講演を終え、質疑応答も済ませた私は
主催者からの打ち上げの誘い断り、
帰りのハイヤーの申し出も断り、地下
鉄に乗ってある場所に向かった。そこ
行きつけの楽器店のギター売り場
った。幸い閉店まではまだ時間がある。

 

馴染みの店員が私を見つけて近寄って
きた。

 

「こんばんは。またいらっしゃいまし
たね。今週これで3回目じゃないです
か」

 

君が非番の日をいれると4回目だと思
ったが口には出さず、「例のあれ、ま
だ売れずにあるかね?」と私は聞いた。

 

「ありますよ。1954年のレスポール。
最高のコンディションでしょ? 店長
とも話したんですが、今日決めていた
だければ、いくらか勉強させてもらい
ますよ」そう言って店員は私の耳元で
ある数字をささやいた。私の心臓は高
鳴った。

 

「い、いや、しかしなあ。こんなにギ
ターばかりあってどうするのって、昨
日も妻にいわれたばかりだしなあ……」
私は言った。たしかに私の部屋はギタ
ーで足の踏み場もないのだ。

 

「じゃあ、いらないギターの買取もさ
せていただきますよ。そっちも他なら
ない先生ですから、いい値段で考えま
から」私の心臓はさらに高鳴る。

 

しかし、と私は思う。私の部屋に「い
らない」ギターなどあるだろうか? 
や、そんなものはない。どれもそれ
ぞれ思い入れのあるギターたちだ。手
放すなんてことはできない。

 

次第に私は家に帰って妻に言う言い訳
を必死に考え始めていた。ライター歴
35年。それくらいの言い訳を考えるの
は簡単だろう。私はそう自分に言い聞
かせて頭を絞り続けた……

 

(今回のお話はフィクションであり実
在するライターやギター売り場とは何
の関係もありません。おそらく……)

 

て、ことで。

 

それでは、また。( ̄▽ ̄)

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