足りない…(後編)

んにちは、青井明でごさい
ます。
前回
の続きでございまし
て…

 

幽霊が出るという格安アパートを無理
やり借りる交渉をして、お試しにこぎ
けた、自称デスメタラーの男のお話で
ございました。部屋に荷物を置くと、
当面の買い出しに出かけまして、部屋
に戻れば、日はもう暮れております。

 

買ってきたビールをプシュッと開けま
して…

 

「あー、助かった。部屋が借りられそ
うで、よかったよかった。なんたって
格安だからな。これで彼女のご機嫌と
らなくても居場所が確保できるし。気
楽でいいや。まったくちょっとライブ
に来てた子とLINEやってたら逆上しや
がって…。まだ手を出してもいないの
さ…」

 

勝手なことをいって、ビールを飲み干
し、2缶目を開けます。

 

「しかしなー、まったく幽霊とか馬鹿
言ってんじゃないよ。ベース弾きがラ
イブでちょっとばっか失敗したのを気
に病んで、そんで病気になって死んじ
ゃった?どんな虚弱体質だよ。俺なん
かどんな間違いやったって平気な顔し
てるけどなー」

 

そんなことを一人でぶつぶつ言いなが
ら飲んでいるうちにいつの間にか、買
ってきた6缶パックは空になってしま
い、時刻は真夜中過ぎでございます。
昔でいう丑三時…

 

「さて、と…」

 

男は持ち込んだベースをケースから取
り出しました。

 

「来週のライブの曲の練習でもするか
な」

 

この男、男女関係にはだらしないんで
すが、練習は真面目にやるんですな。
バンドマンにはよくあるタイプですが

 

で、こうベースを構えた。…その時、

 

「え?お、おおお?」

 

背中に悪寒が走ります。それとともに
何かが身体の中に入ってきた感覚を覚
えました。両手が自分の意志では動か
なくなっておりまして、左手の薬指は
ベースの3弦3フレット上に、ぴたり
と、こう吸い付くように置かれて動か
せません…

 

悪寒が去ると、今度は何かまるで生暖
かいゼリー状のもので全身が包まれて
いるような感覚に襲われ、身体の自由
がききません。そして、いきなり耳元
でバンドの音が聞こえてまいります…。

 

これが、しかしいつもやってるバンド
の音じゃない。そもそもBPMが違い過
ぎる。かなりゆったりしておりまして…

 

「しかし聞き憶えはある 。そうか!」

 

思い出しました。これはいわゆるカノ
ン進行とよばれるコード進行でごさい
まして。バロック時代にルーツを持ち
現代でも様々な曲で使われております
…(ここんとこ、話が少々説明的なの
はご容赦ください)

 

ループしたコード進行が頭にもどった
とき、男の手が動き出します。Cから
B、BからAそしてG…スケールを下
降していくベースラインクリシェ。男
の意志とは全く関係なく、両手が動い
ております。

 

F、E…まできたとき男の頭に衝撃が
走り、耳元で声が!

 

「あああああああ違う!これは5弦ベ
ースじゃなく4弦ベースじゃないか!
5弦がないと下のDを弾くことができ
ない!」頭の中の声が叫びます。

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「1本足りなああああああい!」

 

力を振り絞って手に持っているベース
を見ると、なんとしたことか、間違え
彼女の家から自分のではなく彼女の
ベースを持ってきてしまったようでし
て、そこにはショートスケールのピン
クのベースが…

 

「1本足りなああああああい!」

 

「おおおお、おいおい、なぜそこまで
下のDを弾くことにこだわる?オクタ
ーブ上にいけばいいじゃないか?」と
男は口に出そうとします。が、

 

「そんなのはいやだああああぁ」

 

耳元の声が叫び返してきます。

 

「ふ…真面目なんだな…」

 

次第に意識が薄れて参ります…

 

「嫌いじゃないぜ、そういうの…」

 

「おれのベースならいつもダウンチュ
ーニングしてあるから下のDまで弾け
…たん……だが…」

 

(暗転)

blackout

 

…では、また  ( ̄▽ ̄)

 

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