何度もいうが、あいつと仕事
をするのが大変なのはよくわか
る。
部長は PC のスクリーン越しにそう言
った。
はあ、何度も聞いてますが、それはも
う何の慰めにもならないので。俺は言
い返した。何度こんな会話をしなけれ
ばいけないのだろう。
毎度毎度、俺は部長との面談で、あの
同僚とのチームをそろそろ解消したい
と懇願するのだが、受け入れてもらえ
ない。
まあ、そう言うな。俺は君とあいつの
組み合せは、焼き芋とスパイスみたい
なモノだと思っているんだが。部長が
また突拍子もないことを言い出した。
焼き芋……ですか?
うん。実は最近焼き芋に目覚めたんだ。
部長が身をのり出してくるのが画面越
しに見えた。変なものに目覚める人だ。
今、焼き芋ってスーパーにいくとどこ
でも売っているだろう? だけど、昔
は焼き芋屋でしか買えなかっただろ?
はあ。どこに行こうとしてるんだ、こ
の会話は。
あれ、スーパーの中で焼き芋を焼ける
電気釜を開発したメーカーがあったん
だな。それでここ20年くらいで一気に
全国のスーパーに広まったらしい。部
長は続けた。
そして、最近ではあのねっとりとスイ
ーツのように甘い安納芋とか紅はるか
とかいう品種が出てきている。冷めて
も甘くておいしい。自然な甘味で、体
にもいい。
だが、この冷めた焼き芋をだな、輪切
りにして、フライパンでごま油かなん
かで焼いてやると、また別の美味しさ
が生れる。話が料理教室みたいになっ
てきた。
フライパンで焼くんですか? それは
やったことはなかったな。俺は思った。
たまに娘が食べているのを少しもらっ
て食べる程度だった。それもたしかに
美味いのだが。
そうだ、焼き目をつけて、そこに好み
のスパイスを振って食べると、一気に
大人のスイーツに変身する。バニラア
イスかなんか添えてもいい。部長の表
情は恍惚としてきた。なんだか俺も口
の中につばが湧いてきた。
色々試したんだが、私の好みは七味唐
辛子だな。これは YouTube でどこかの
シェフが言ってたんだが。甘い焼き芋
に七味という意外性もあるが、なかな
か乙なもんだ。
そして、もう一つ、クミンのパウダー
も凄くいい。カレーを作るために買っ
たクミンが焼き芋にこんなに合うとは
思わなかった。部長は続ける。
俺の頭の中は、クミンを振った焼き芋
でいっぱいになってしまった。
で、だ。この取り合せは焼き芋がどん
なスパイスと組み合わされてもしっか
りと焼き芋として美味しいから成立す
るわけだ。君が紅はるかでしっかりと
土台を作っているから、あいつがクミ
ンパウダーみたいな変化球でも、しっ
かり結果が出るわけで……
あ、はい、わかりました。良く考えて
みます。ありがとうございました。失
礼します。まくし立てる部長をさえぎ
って俺はオンライン面談を終了させた。
同僚のことなどどうでもよくなってい
た。俺は立ち上って、家を出て焼き芋
を買うために近所のスーパーに向かっ
た。七味やクミン以外に他に何を組み
合わすのがいいだろう? そんなこと
を考えながら。
※このお話はフィクションですので、
現実の会社や変な同僚や部長や、スー
パーの焼き芋や焼き芋機とは無関係で
す。あ、でもクミンとの組み合せはお
勧めです。
て、ことで。
それでは、また。( ̄▽ ̄)
お読みいただきありがとうございま
した。こんな話やら、セッションノ
ウハウ情報などお届けする無料のメ
ルマガをやっておりますので、よろ
しければご登録ください。その他、
色々な音楽企画やシニアライフにま
つわる話題をお届けしております。
こちらからどうぞ。▼▼▼
https://seniorlife.sakuraweb.com/page-48/