昔々、パーカッションと歌と
踊りの得意な女性ミュージシャ
ンがいました。
結城志摩子という古風な名前でしたが、
シーラ・Eに憧れていたので、シーラ
・ユーキという名前で YouTube に演奏
動画とかをアップしていたところ、見
た目も悪くないので、そこそこファン
がつきました。
そこで、活動の幅を広げようと思った
シーラ・ユーキは周りでくすぶってい
た音楽仲間に声をかけて、7人編成の
のバックバンドをつくりました。
そして、シーラ・ユーキと7人の小人
という名前で、さらに動画を作ると同
時にライブハウスでのステージ活動も
始めました。派手な衣装で、ファンキ
ーにパーカッションを叩きまくって歌
って踊るというステージはそれなりに
注目を集め、かなりの人気となりまし
た。
さて、そんなシーラ・ユーキの活動を
横目で見て面白くなかったのが、同じ
ように YouTuber からのし上がろうと
していたある女性ミュージシャンでし
た。人生の苦悩を歌う陰キャな彼女の
動画は、それなりに受けたのですが、
再生数もフォロワーの数もシーラには
今一つ及びませんでした。
そんな、ある日……
なんの巡り合せか、とあるライブハウ
スでこの陰キャの女性シンガーとシー
ラのバンドは対バンになったのです。
その時、陰キャのシンガーの頭にある
悪い考えが浮んでしまったのです。
シーラのバンドのちょうど1つ前のス
テージだったその陰キャ・シンガーは
こっそりステージの上に飲んでいた水
をこぼしました。ちょうどシーラが激
しく踊るあたりを狙って……
その日のライブハウスのスタッフは、
あまり注意力のない人だったので、ス
テージに水がこぼれたのに気がつかず、
そのままシーラのバンドをステージに
送り込んでしまいました。
そして、演奏が始まり、シーラが歌い、
パーカッションを叩いて踊り始め、観
客はノリノリになりました。が、その
時、ステージの水ですべってバランス
を崩したシーラは、足をくじいて倒れ
てしまったのです。
シーラは倒れたまま起き上れません。
演奏は中断し、大騒ぎになりました。
と、その時、客席から1人の王子様の
ようないでたちの男性がステージに飛
び出してきたのです。
それはメジャー・デビューして人気が
出たものの最近活動に行き詰りを感じ
ていたあるミュージシャンの男性(説
明的)でした。シーラの噂を聞いて、
その日観に来ていたのです。
「感動した。君はこんなレベルの小屋
で満足していてはいけない。僕と一緒
に活動しないか?」
聞きようによっては大きなお世話なそ
んなセリフともに、その男はシーラを
抱きかかえるとそのまま彼女を連去っ
てしまいました。
その後2人は一緒に活動を始め、さら
にメジャーなスターになっていったそ
うです。
「……」
残された陰キャなシンガーと「7人の
小人」はしかたなく新ユニットを組ん
だそうですが、鳴かず飛ばずで消えて
いきましたとさ。
おしまい。
てことで。
では、また ( ̄▽ ̄)