むかしむかし、あるところに、
とてもエレキギターの好きな王
様がいました。
とてもエレキギターの好きな王
様がいました。
好みのギターを見つけては、それを弾
くのが王様の楽しみです。なんせ王様
なので、金にあかせて国中の楽器屋か
らギターをお取り寄せしてはコレクシ
ョンに加えていきました。
まあ、度を越さなければ罪のない趣味
なんですけどね。次第に問題が生じて
きました。
1番目の問題は、この王様、毎日朝か
ら晩まで大音量でギターを弾くのです。
そのため、クラシックにしか興味のな
いお妃様は実家にかえったまま戻らず、
家臣も爆音に絶えられずに宮廷を辞め
ていく者が続出、という事態になって
いたことでした。
2つ目の問題は、国中の良いギターを
王様が買い占めてしまうので、ギタリ
スト達が不満に思って、反政府組織を
立ち上げたことでした。まあ内輪もめ
ばっかりして、大した力はないのです
が。
3つ目は小さな国なので、ビンテージ
ギターを買い漁る王様のおかげで、国
家予算が回らなくなってきたことです。
そんなわけで、困ってしまった側近の
大臣たちはある計略を練りました。
ある日、王様の所に、私は世界最高の
ルシアー(ギターを作る人のことをカ
ッコつけてこう呼びます)だという男
がたずねてきました。男は王様に言い
ました……
「私の作るギターはとても軽くて弾き
やすく、弾く人が弾けばミストーンも
なくなり、音楽の分からない者には、
このギターは見えず、王様の素晴らし
い演奏も聞こえないのです」
「ほほう、それは面白い」そう言って
王様は早速そのギターを1本注文しま
した。王様はもうすぐやって来る王室
主催のロックフェスでそのギターを弾
こうと思いました。そうすれば、誰が
音楽のことを本当に分かっているかが
確かめられると思ったのです。
1週間ほどした、ロックフェスの当日
の朝、その自称ルシアーは再びやって
きました。そして、ギターケースを王
様の前に差し出しました。王様はわく
わくしてケースを開けました。すると
……
……
びっくりしたことに、王様の目にはど
こにもギターは見えませんでした。と
ころが周りにいた大臣たちや家来たち
は、「おおー」「なんと素晴らしい」
「これは国宝級のギターですなあ」な
どというのです。
「王様、どうぞ弾いてみてください」
という家来たちの声におされて、王様
は見えないともいえずにギターを手に
とり弾くふりをしました。するとどう
でしょう、サステインの効いた官能的
な音が鳴り響いたのです。ま、実は物
陰でこのために雇われたギタリストが
弾いてたんですけどね。
家来たちは体を左右前後に揺り動かし、
恍惚とした表情をしています。中には
失神する者も出てきました。
王様はなんだかよく分からないものの
ウケているのに気を良くし、そのギタ
ーを(?)弾き続けました。そして、
そのままロックフェスのステージに向
かい、そこから2時間にわたって弾き
つづけました。
客席にいた国民たちは、なんで王様は
ギターを持っていないのだろうと思い
ましたが、声援を送らないと牢屋にい
れられるので、声をからして王様の名
を叫びました。
4回目のアンコールの後、王様は言い
ました、
「この空気のように軽くて素晴らしい
音のギターをエア・ギターと名付けよ
う!」
これがエア・ギターの生まれた瞬間で
した。そして、全世界に広まっていっ
たのでした。王様は生涯エア・ギター
を手放さず、毎日12時間は弾いてい
たそうです。そのため、王室は沢山の
ギタリストを王様に内緒で雇ったそう
です。
この仕事を受けるか受けないかについ
てギタリストの間では内部抗争が起こ
ったそうですが、それはまた別のお話
ということで……
今でもこの国では、毎年のお祭りでエ
ア・ギター・コンテストが行われてい
るそうです。おしまい。
(ちなみに、有名なアンデルセンの童
話「裸の王様」の原題は「皇帝の新し
い着物」というのだそうです)
て、ことで。
それでは、また。( ̄▽ ̄)
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