ある晩、俺がリビングに行く
と、高校生の娘が暗い顔をして
座っていた。
どうしたんだ?
俺が尋ねても、じっと黙っている。こ
ういうときは、だいたい学校の課題と
か宿題が大変だとか、そんなことが原
因なことが多い。
何度か質問しているうちに、ようやく
娘が話し出した。どうも何かテーマを
決めて自分で調査とか研究とかをして
レポートをするという課題が出ている
らしい。そのテーマとどんな研究をす
るか、翌日発表しなければならないと
いう。
本当はその日早く帰ってきて考えをま
とめるつもりだったのだが、学校の合
唱祭で娘がピアノの伴奏を弾くことに
なり、その打合せが夜までかかってし
まって、準備が出来なかったらしい。
娘は3歳の時からピアノを習っていた
ので、お鉢が回ってきたようだ。
打合せで疲れて頭が回らないし、どう
したらいいかわからない、と娘は今に
も泣きそうな顔で言った。
テーマは自由でいいんだろ? 何か思
いつくことはないの? と俺は聞いた
が、考えがまとまらないらしい。なる
べく自分の日常の身の回りのことをテ
ーマにするのが良いらしいが、良い考
えが浮ばないらしい。
俺は、聞かなきゃよかったと思ったも
のの、このまま放ったらかして自分の
部屋に戻るのも親としてどうかと思い
娘のそばに腰かけた。
んー、と、そうだなあ。身の回りかあ。
おれはそう言いながら、何かないか考
えを巡らした。
えーと、あ、その合唱祭に何か関係の
あることってどうかな? 苦し紛れに
俺は言った。
合唱祭に関係することって何よ? 娘
は聞き返してきた。
だ、だからさ……そうだ、クラスの中
にも音感のいい人間もいれば悪い人間
もいるだろ? 音が簡単に取れる子も
いれば、苦労する子とか。
娘はうなずいた。彼女は小さい頃から
ピアノをやっているので、絶対音感が
あるらしい。自分のように音を聴きと
れない人間がクラスにいることは理解
しているようだ。
だから、そんな人間の音感について調
べるっていうのはどうかな? クラス
の中で絶対音感持ってる人とそうじゃ
ない人を調べてみるとか。
娘の顔が明るくなった、それならでき
るかもしれない、と思ったようだ。
わかった。それでまとめてみる。娘は
言った。
俺は、親の威厳をなんとか繕いつつ、
部屋に戻った。ふう、口からでまかせ
だったがなんとかなったようだ。夜に
娘が1人でいるところにはなるべく近
づかないようにしよう。
そんなことを考えながら、俺は、部屋
のPCの前に座った。スクリーンには
作りかけのプレゼンテーション資料の
ファイルが開かれていた。
スクリーンを改めて見て、俺は頭を抱
えた。明日までに来期にむけてのクラ
イアントへの提案内容をまとめて本部
長に説明しなければならないのだが、
何も思いつかない
のだ。なんとか早くまとめないと、と
思うものの、手が動かないまま時間ば
かりが過ぎていくのだった。このまま
では徹夜だ……
※このお話はフィクションですので、
現実の高校生、合唱祭、授業の課題、
会社のプレゼンテーションとは無関係
です。きっと。
て、ことで。
では、また。( ̄▽ ̄)
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